ポアンカレ万華鏡の制作 (4) ポアンカレ円板のタイリングデザイン

それでは、双曲幾何のモデルであるポアンカレ円板で、万華鏡の作成に適したタイリングデザインはどんなものでしょうか。

まず、双曲幾何では三角形の内角の和が小さくなると面積が大きくなる性質があります。(三角形の内角の和が決まると面積が一意的に決まります)

そのため、三角形の内角の和が小さいと、ポアンカレ円板の中央部にある三角形が極端に大きくなり、周囲の三角形が急激に小さくなって、形状変化の流れが滑らかでなくなってしまいます。したがって、三角形の内角の和はなるべく大きい方が良いでしょう。
下の2つの図は、それぞれ内角が (45, 22.5, 22.5) の三角形と、(25.7, 30, 30) の三角形で、ポアンカレ円板をタイリングしたものです。円板の中心に頂点を持つ三角形が、円板の面積の大半を占めています。
45-225-225
257-30-30
では、下の2つのタイリングを見てどのような違いがあると思われますか?
45-45-45
45-45-45c
実は、この2つのタイリングは双曲幾何的には全く同じです。どちらも同じ三角形 (45, 45, 45) で構成されています。けれども、円板の中心(双曲幾何の平面世界の中心)を三角形の頂点に置くか、三角形の中心に置くかでタイリングの見栄えがこんなに変わるのです。

それでは、万華鏡にした場合はどちらがきれいでしょうか? タイリングで見た場合は、どちらもそれなりにきれいに見えますね。

万華鏡は鏡像の対称性を楽しむものです。その対称性は三角形の中心ではなく、頂点を基準にして生じます。そのため、万華鏡を見る人の意識は自然と頂点の 集まったところに行きます。ですので、万華鏡にしたときには、上の左のタイリングの方がずっときれいに見えます。

このようなことを考えて、選んだタイリングの候補は次の3つです。

一つ目は、すぐ上に載せた図と同じ、三角形の内角が (45, 45, 45) のものです。双曲幾何的には、正三角形と呼べるかもしれません。ただ、ポアンカレ円板上に配置すると中心部の三角形の一辺が圧縮されて、少し細長く見えます。
45-45-45
二つ目は、三角形の内角が (60, 45, 45) のものです。エッシャーの「円の極限 I」と同じタイリングです。中心部の三角形が、宝石のカッティングのように調和のとれた形状をしているのが魅力的です。
60-45-45
三つ目は、三角形の内角が (45, 60, 60) のものです。上の二つより内角の和が大きいので、中心部の三角形の面積が小さくなります。そのため、円周方向への三角形の縮小が滑らかで、自然な感じがします。
45-60-60
さて、3つのうちでどれが最もきれいだと思われますか?

人それぞれ好みは違うと思いますが、私は三つ目の (45, 60, 60) を選びました。
コンピュータの万華鏡は画面のほぼ一杯に万華鏡像を描画するものです。ですから中心部の三角形が小さい方が、円板の中央が目立ちすぎず、円板全体をバランス良く表現するのではと考えたからです。

次は、このポアンカレ円板のタイリングを使って、コンピュータ上の万華鏡を制作する過程についてお話ししましょう。

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