ポアンカレ万華鏡の制作 (3) 万華鏡に適したタイリング

それでは、万華鏡の作成に適した、タイリング可能な三角形の形について考えてみましょう。最初にユークリッド幾何の場合を取り上げてみます。

タイリング可能なだけで良いのであれば、どんな形の三角形でも平面をすき間なく埋めることができます。
normtile
しかし、万華鏡は鏡面を境にして、いくつもの同じ三角形像を映し出すものなので、単なるタイリングとは異なります。

万華鏡らしい表現をするためには、(i) 三角形の辺を基準にして順番に折り返した図形が平面をすき間なく埋めることが必要です。数学では、この折り返しのことを鏡映 (reflection) と言います。
reflection
 また、(ii) 三角形を辺を基準にして平面上の1点を中心に折り返したときに、偶数回で最初の三角形に戻ることが必要です。もし奇数回だと、直下の図のように1つの辺について正しい鏡像を生成できないという矛盾が生じます。
7vertexref
6vertexref
そしてユークリッド幾何における定理から、(iii) 三角形の内角の和は二直角(180度)である必要があります。中学校の数学で習う、例の定理です。
triangle
そして、万華鏡にしたときの美しさを考慮すれば、(iv) 三角形の中でも二等辺三角形(正三角形も含みます)を用いることが、対称性の点から好ましいでしょう。

もっとも、美しさというのは主観的なものですし、現実にはあり得ないような万華鏡が実現できるのがコンピュータの良いところとも言えます(「ポアンカレ 万華鏡」は、まさにそれをやろうとしているのです)。ですから、さまざまな三角形で万華鏡を作ってみるのも興味深いことではありますが、ここでは上の条件 (i) (ii) (iii) (iv) を前提に話を進めます。
vertexref
まず上記の (i) の条件から言えることは、同じ内角を持つ三角形の頂点がすき間も重なりもなく平面上の1点を取り囲めることです。このことから、三角形の内角は360度(すなわち、1点を1周するときの角度)を自然数 (1, 2, 3, …) で割った角度である必要があることがわかります。さらに (ii) の条件から、内角は偶数で割った角度でなければなりません。具体的には、(i) (ii) の条件で取りうる三角形の内角の角度は次のようになります。

360÷2=180, 360÷4=90, 360÷6=60,
360÷8=45, 360÷10=36, 360÷12=30,
360÷14=25.7, 360÷16=22.5, 360÷18=20, ・・・

また、(iii) の条件が制約になるので、ユークリッド幾何では三角形の一つの内角が180度、36度および25.7度以下になることはありえません。そうすると、残る三角形の形は、内角の角度が(90, 45, 45)、(90, 60, 30)の直角三角形と、(60, 60, 60)の正三角形になります。

最後に (iv) の条件を適用すると、ユークリッド幾何で万華鏡に適したタイリングのできる三角形はたった2種類しかありません。内角の角度が(60, 60, 60)の正三角形と(90, 45, 45)の直角二等辺三角形です。これらの三角形によるタイリングの例は(1)に示した通りです。

一方、双曲幾何の場合にはユークリッド幾何における三角形の内角定理 (iii) は当てはまりません。不思議なことに、双曲幾何では三角形の内角の和は180度未満のどんな値でも取りうるのです。そのために、上の条件 (i) (ii) (iv) を前提にしても、タイリング可能な三角形の種類は無数に存在します。万華鏡のバリエーションとしての可能性は、ユークリッド幾何よりも双曲幾何の方がずっと大きいかもしれません。

次は、実際に双曲幾何的タイリングの例をあげて、万華鏡に適したものを探すことにしましょう。

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